自民党は10月4日の投開票で高市早苗氏を第29代総裁に選出しました。就任会見では、所得税の減税と現金給付を組み合わせた「給付付き税額控除」の具体化に向け、党内で議論を始める意向を表明しました。
給付付き税額控除とは、税額控除に現金給付の要素を加えた制度を指します。
通常の税額控除では、税額を差し引いても控除しきれない部分は消滅しますが、この制度では差額を現金で給付します。そのため、所得税をほとんど納めていない層でも実質的な恩恵を受けられます。いうなれば、「税金を納めなくても還付が受けられる」仕組みです。
「給付付き税額控除の主なメリット」
・・・給付付き税額控除の最大の特徴は、低所得層への実質的な恩恵です。
①「税を納めなくても還付」を実現:通常の税額控除と異なり、税額を上回る控除分は現金で給付されます。これにより、所得税をほとんど納めていない低所得者層でも、その恩恵を直接受けられます。
②就労意欲の促進:アメリカのEITC(勤労所得税額控除)のように、所得に応じて給付額が変わる設計にすることで、働くことへのインセンティブ(誘引)を高める効果が期待できます。
「日本での導入における主要な課題」
・・・日本では長年検討されてきたものの、実現に至っていないのには主に以下の課題があるためです。
①所得が少なく申告義務が免除されている層への対応:最大の課題は、所得が少ないことで結果的に申告義務を免除されている層(学生アルバイトや専業主婦パート等)の所得把握の難しさです。給付の公平性を保つためには、すべての国民の所得を網羅的に捕捉できるシステムが不可欠です。
②行政コストと不正受給の懸念:制度を運用するための行政コストがかかります。また、海外の事例(EITC)のように、過誤や不正受給のチェック体制(監査や申告システムの整備)が不十分だと、制度の信頼性が損なわれるリスクがあります。
マイナンバー制度や公金受取口座の整備が進んでおり、上記の課題解決に向けた実現の基盤は整いつつありますが、まだ時間がかかると思われます。
担当:加村
2021年に政府の発表した成長戦略実行計画に基づき、2027年3月までに紙ベースでの小切手および手形が廃止されます。
インターネットバンキングなどの普及により、紙ベースの小切手・手形の使用はあまり見かけられなくなりましたが、一方、製造業や建設業ではまだまだ使用されているのが現状です。
とある大手銀行では、2025年9月30日をもって小切手帳・手形帳の新規発行受付を終了しました。また多くの銀行では、2026年9月30日をもって小切手や手形の新規振出しが出来なくなります。
紙ベースの小切手や手形の代替案として、インターネットバンキングの利用や電子記録債権(でんさい等)がありますが、システムの導入や社内での研修、また取引先との契約や支払条件の見直しが必要となってきます。
新しいシステムの導入や取引先との契約条件の見直しには時間もかかる為、ぜひ早めの対応準備を進めていきましょう。
参考:一般社団法人全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/tegata-kogitte-haishi/
担当:阪峯
国税庁より、『令和7年分 年末調整のしかた』が公表され、昨年(令和6年分)からの制度改正が複数実施されます。特に基礎控除・給与所得控除・扶養控除等に関する見直しが行われており、年末調整業務に影響するため、早めの対応・確認が求められます。
【1】基礎控除の見直し
従来一律だった基礎控除額が、合計所得金額に応じた段階的な金額へと見直されました。
【2】給与所得控除の見直し
給与所得控除の最低保障額が、従来の55万円から65万円に増額されました。
【3】特定親族特別控除の新設
所得者が19歳以上23歳未満の『特定親族』を有し、当該親族の合計所得金額が58万円を超える場合には、その金額に応じて、所得者の総所得金額等から最高63万円の控除が段階的に適用されます。
※年末調整で適用するには「給与所得者の特定親族特別控除申告書」の提出が必要です。
※合計所得金額が58万円以下の場合は、扶養親族に対する扶養控除の適用になります。
【4】扶養親族等の所得要件の見直し
基礎控除の見直しに伴い、以下のように合計所得金額の要件が緩和されました。
※ひとり親の生計を一にする子:所得要件は総所得金額等の合計額で判定になります。
【5】適用時期と注意点
・原則:令和7年12月1日から施行されます。
・年末調整には改正後の制度が適用されるため、事前準備が重要です。
・年内の給与支払:改正前規定に基づき源泉徴収を実施されます。
参考ウェブサイト
国税庁「令和7年分 年末調整のしかた」参照
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/nencho2025/01.htm
国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」参照
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm#a-02
担当:幸本
最近、ニュースやSNSで「AI」という言葉をよく目にしませんか?
AIは私たちの生活だけでなく、税務の世界も大きく変えようとしています。
税理士の仕事はAIに置き換えられると言われることもありますが、AIに単純作業を任せることで、申告書の作成がスピーディーかつ正確になり、お客様一人ひとりの状況に応じた、より質の高いアドバイスや経営相談に時間を充てられるようになります。
今後、AIを活用する税理士と活用しない税理士の間には、大きな差が生まれる時代が訪れると考えています。
だからこそ、当事務所では積極的にAIを研究・活用し、より手厚いサービスを提供することで、他事務所との差別化を図ってまいります。
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最新技術を味方につけ、お客様の事業を力強く支援してまいります!
担当:東川
各保険会社から、生命保険料控除証明書などが10月頃から順次届き始めます。
すでに発送の連絡があった方もいるのではないでしょうか。
年末調整は毎年11月から12月に行われますが、スムーズに進めるため、早めに準備を始めましょう。2025年の年末調整は、税制改正による変更点が多く、準備が重要になります。
■企業の担当者の方へ
「扶養控除等(異動)申告書」や保険料控除証明書の配布・回収スケジュールを早めに立てましょう。
今年は、基礎控除や給与所得控除の引き上げ、および特定親族特別控除の創設に伴い、申告書の様式が変わります。書類の不備や提出遅れを防ぐため、新しい様式での確認体制を整えることが大切です。
社員の家族構成や保険加入状況の変化も、正確に把握しておきましょう。
■個人の皆さまへ
生命保険や地震保険の控除証明書を早めに準備しておくと安心です。
扶養家族の増減や住宅ローン控除の有無も、事前に確認しましょう。
今年の変更点として、扶養親族等の所得要件が緩和されるため、扶養しているご家族の収入もあわせて確認しておきましょう。
年末調整は給与計算に関わる大切な手続きです。企業の方も個人の方も、慌ただしい年末をスムーズに過ごせるよう、計画的に準備を進めてみてはいかがでしょうか?
担当:濵村
国税庁は令和7年9月から、税務調査のデジタル化をスタートしました。これにより、調査官と納税者が メールでのやり取り や Web会議システムでの面談、オンラインストレージを通じた資料の受け渡し が可能になります。
これまでの「電話・対面・郵送」が中心だった調査対応が、より効率的かつ柔軟なスタイルへと変わっていきそうです。
オンライン調査はあくまで「任意」であり、強制ではありません。
利用を希望する場合は、調査官に 同意書の提出やメールアドレスの登録 を行い、テストメールの確認など事前手続きが必要になります。
「メール連絡はオンライン、面談は対面」など、柔軟な組み合わせも想定されています。
導入スケジュール
・令和7年9月〜 金沢局・福岡局から先行導入
・令和8年3月〜6月 その他の国税局・税務署にも順次拡大予定
担当:轟
2025年10月からふるさと納税の仲介ポータルサイトを経由した寄付に対し、寄付額に応じたポイント還元が禁止されますが、2026年10月にもさらなる改定が行われます。
2026年は返礼品ルールの改定が行われ、それにより一部の家電や加工食品が対象外となる可能性があり、行き過ぎた返礼品競争に歯止めをかけることが趣旨となっています。
具体的な内容として、生産過程の大部分を他地域に頼っている製品や、自治体名や地元キャラクターを付けただけの製品に規制がかけられます。地元企業が企画や販売のみを担い、製造工程は海外の工場に委託しているもの。海外で製造されたものを輸入し、熟成など最終工程だけを地域で行っているものが「地元で生み出された製品」といえるのかどうか。工業製品や加工品を返礼品にする場合、製品価値の過半が地元で生じたことの証明がメーカーに求められます。
この改定により、返礼品競争に歯止めがかけられるかは不透明ですが、来年度より品ぞろえが見直されることになります。迷われている返礼品がある方は、今年度のふるさと納税で寄付をされておくのが安心かもしれません。
担当:堀野